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2016/08/08

【高知新聞】清水さばを長距離輸送

 

「土佐清水市から、6時間半かけて来たサバです!」。神戸市中央区の居酒屋「土佐清水ワールド」3号店が、大型水槽に清水さばの群れを泳がせ、締めたてを提供している。「地元でしか味わえない食材を都会でも」と、清水さばでは初の「活魚の長距離輸送」に挑戦した。

同店の運営会社は、土佐清水市と食材提供や観光PRなどで協定を結び、それまでも、同市で生き締めした清水さばが直送されていた。神戸市を中心に同店などを経営する同社の河野圭一社長(45)や連絡調整役を務める元土佐清水商工会議所職員、竹田真さん(37)は、一歩踏み込む活魚輸送の試みを振り返る。「最初は地獄絵図だった」

3号店オープンまで半月の6月下旬。活魚車に載せた試験輸送の100匹が到着し、店内の水槽に移した途端、猛スピードで泳ぎ始めた。サバはぶつかり合い、あるいは水槽の壁面に衝突し、次々に力尽きていく。活魚車と水槽の水温・水質の差がストレスとなり、パニックに陥ったとみられる。

店側は取り寄せた土佐清水沖の海水を参考に、水槽内の水質を調整した。しかし水温の方は機器の調子が悪く、活魚車より10度近く高い25度のまま。開店3日前の試験輸送(80匹)も、翌日まで生きたのはわずか14匹だった。機器を何度も修理し、やっと水温が下がったのはオープンする7月7日。当日届いた中から約50匹を水槽に投じると…静かに回遊し始めた。

朝日がキラキラと海面を照らす午前6時すぎ。土佐清水市の清水港岸壁に、サバ漁を終えた漁船が次々と横付けしてくる。「釣れたけん。安心しい」。上々の釣果に漁師の顔がほころぶ中、魚体をすくったたも網を手に、漁協職員が走る。通称「サバダッシュ」。計量後、漁協内の水槽や活魚車に移され、神戸へ出発する。

3号店オープンの日、客は「水族館みたい」と声を弾ませ、皮が銀色に光る刺し身に舌鼓を打った。河野社長と竹田さんは「地域が一体になった“オール土佐清水”のおかげ。感謝の気持ちでいっぱい」。興奮で声は震え、涙がこぼれていた。